カーボローディング(グリコーゲンローディング)Carbo loading

カーボローディング(グリコーゲンローディング)とは、レースの数日前から高糖質食を取ることで、エネルギー源となる筋グリコーゲンの濃度を高め、パフォーマンス向上を狙う食事法です。

筋グリコーゲンは、運動時のエネルギー源となります。研究により、筋グリコーゲン濃度が高いほど、運動時間を長く続けられることがわかっています。[1]

運動開始前の筋グリコーゲン濃度と運動持続時間の関係 [1]

したがって、カーボローディングを行うことで、マラソンなどの持久力が必要なスポーツにおいて、より長く高いパフォーマンスを発揮できる可能性が高まります。

カーボローディングの要約
  • カーボローディングが有効なのは運動時間が60〜90分を超える持久系スポーツ
  • レース3日前から、高糖質食を摂取(8−12g/kg/体重/日)
  • カーボローディングをすると体重が増加する可能性あり
目次

カーボローディングのメカニズム

カーボローディングは、運動で筋グリコーゲンが減った状態から、高糖質食を摂取すると、筋グリコーゲン濃度が運動前より高くなる「グリコーゲン超回復」という現象を利用した食事方法です。

片脚のみ運動を実施後、3日間高糖質食を摂取したことで、運動を行った脚のみ「グリコーゲンの超回復」が認められた [1]

この筋グリコーゲンの超回復に重要な役割を果たすのが、GLUT4と呼ばれる血液中の糖を細胞内に取り込むための糖質輸送体です。

持久的なトレーニングを続けることで、骨格筋のGLUT4が増加します。つまり、トレーニングを積み重ねるほど、骨格筋は血糖を効率的に取り込み、グリコーゲンとして蓄えることができるようになります。

その結果、持久的なトレーニング日常的に続けている場合、ハードなトレーニング(インターバルトレーニングなど)で一度骨格筋のグリコーゲンが、枯渇した状態を作らなくても、トレーニング量を調整しながら、3日間高糖質食を取ることでグリコーゲンの超回復が望めます。

カーボローディングの方法

カーボローディングが必用な運動時間

60分~90分を超えるレースの場合はカーボローディングを検討しても良いかもしれません、

筋肉のエネルギー源となるグリコーゲン濃度が、ある一定量(70 mmol/kg)を下回ると、筋肉の力が弱まり、最大のパワーが出せなくなります。これは、筋肉の機能がグリコーゲンの量に大きく影響されることを示しています。[2]

トレーニング中の筋グリコーゲン濃度の変動。
筋グリコーゲン濃度 70mmol/kg 未満に低下すると、筋肉の機能が低下[2]

60分~90分以下の持久的運動においては通常、筋グリコーゲン濃度が70 mmol/kg未満にまで低下することは考えにくいため、カーボローディングは必ずしも必要とは言い切れません。

短時間競技における糖質の摂取

60分〜90分以下のレースでは、カーボローディングは必要ありませんが、運動開始時の筋グリコーゲン濃度が低い場合は、60分〜90分以下の運動でもパフォーマンスが低下する可能性が考えられます。カーボローディングを行わない場合でも、レース前は十分な糖質を摂取し、筋グリコーゲンの濃度を高めておくべきです。

またスカイランニングなどの山岳競技では、1日目バーティカルキロメター(30〜50分)、2日目スカイレース(2〜3時間)などのコンバインド種目が行われるケースがあります。このような場合、1日目の種目は60分未満ですが、カーボローディングを行い、筋グリコーゲンの量を増やしておくことで、2日目のパフォーマンス維持につながる可能性があります。

カーボローディングの手順

  1. レース3日前から体重1kgあたり、8〜12gの高糖質食を摂取
  2. トレーニング量を調整
体重別の糖質摂取量
 体重
(kg)
 摂取量
(8g/kg)
摂取量
(12g/kg)
40320g480g
45360g540g
50400g600g
55440g660g
60480g720g
65520g780g
70560g840g
75600g900g
80640g960g
85680g1020g
90720g1080g

例)体重60kg のアスリートの場合

体重60kgのアスリートがカーボローディングを行う場合、1日に約480g(60kg×8g)の糖質を摂取する必要があります。これは、おにぎり100gに約39gの糖質が含まれるとすると、1日に約12個のおにぎり(1食約4個)に相当します。

※体重あたり12gの糖質を摂取する場合は、1日に約18個のおにぎり(1食約6個)に相当します。

カーボローディングの注意点

体重が増える

カーボローディングを行うと、筋肉や肝臓にグリコーゲンが蓄えられます。この時、グリコーゲン1グラムに対して約2.6~2.7グラムの水分も一緒に蓄えられるため、体重が増加します。さらに、レース前の運動量を減らすテーパリングと相まって、体重が増えやすくなります。[1]

カーボローディングは、重要なレースでいきなり試すのではなく、重要度の低いBやCレースなどで事前に試してみることをおすすめします。体重の変化、動きの変化、レース後半のエネルギー切れを感じるかなどを確認し、自分に合った方法を見つけましょう。

低糖質ダイエットをしている場合は、糖質の吸収が悪くなる

低糖質ダイエット(ケトジェニック食など)を続けていると、体が糖質をエネルギー源として利用する効率が低下し、糖質の吸収能力が落ちる可能性があります。[3] 

このような状態からいきなりカーボローディングを行うと、消化不良や体調不良を起こすリスクが高まるため、事前に高糖質食の日をトレーニングスケジュールに組み込み、徐々に体を高糖質の状態に慣らしていくことが大切です。

女性は男性に比べて、グリコーゲンの超回復が起こりにくい

女性アスリートは、男性に比べてグリコーゲン超回復が起きにくい傾向があります。[4]これは、これは、エネルギー摂取量が不足しがちであることが主な原因と考えられています。

筋グリコーゲンの回復に影響を与える主な要因は、総エネルギー摂取量です。運動後に十分な量の糖質を摂取したとしても、エネルギー (カロリー)が不足している限り、筋グリコーゲンは完全には回復しません。[2]

カーボローディングを行う際は、糖質の摂取量だけでなく、総エネルギー摂取量を増やすことで、より効果的にグリコーゲンを蓄えることができます。

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