乳酸 (Lactate / Lactic Acid)

乳酸は、体内で糖質(グルコース)がエネルギーとして利用される過程で生成される物質の一つです。特に、酸素の供給が十分ではない状態(無酸素運動時や高強度運動時)でエネルギーを素早く作り出す際に、その生成量が増加します。

かつては「疲労物質」として認識され、筋肉痛やパフォーマンス低下の直接的な原因と考えられていましたが、近年の研究ではその認識が大きく変わっています。現在では、乳酸は単なる老廃物ではなく、以下のような重要な役割を果たすことが分かっています。

  • エネルギー源としての利用: 筋肉や心臓、脳など、様々な組織で再びエネルギー源として利用されます。特に、運動中の筋肉は、生成した乳酸を別の筋肉や心臓に送り、そこでエネルギーとして再利用する能力を持っています。
  • 糖新生の材料: 肝臓に運ばれた乳酸は、グルコースを再合成する「糖新生」の材料となり、血糖値の維持に貢献します。

持久系アスリートにとって、乳酸はパフォーマンスの指標の一つであり、乳酸が急激に蓄積し始める運動強度(乳酸閾値など)を把握し、それを高めるトレーニングを行うことが、競技力向上に繋がります。適切に乳酸を利用し、処理する能力を高めることが、疲労を遅らせ、運動を持続させる上で重要です。